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ボゴタの少年のスリ


ボゴタの少年のスリ


眼は天使、微笑は純金、指はリス、足は影。


『ALL WAYS』より

ムーンストーン


ムーンストーン


柔らかい乳白色の高原の夜霧のなかに青い光耀がある。

この石には、大いなる鐘の沈んだ淵や月下のタージ・マハールの壁がひそんでいる。


『ALL WAYS』より

人が賢くなれるのは・・・・


人が賢くなれるのは・・・


昨日をふりかえるときだけ。


『ALL WAYS』より

現在


現在


一瞬ごとに音もなく未来は現在となり現在は過去となる。

劫初からこの大河を止めることのできた人は一人もいない。

しかし、過去・現在・未来の三つがあるのは現在だけである。

この一滴の中だけである。


『ALL WAYS』より

小さな死 La Petite Mort


小さな死 La Petite Mort


情事の直後の、

短くて、

深くて、

完璧なとろとろの昏睡を、

フランス人は、

" 小さな死 "と呼ぶ。


『ALL WAYS』『夏の闇』『知的な痴的な教養講座』より

何故、山にのぼるか・・・・


何故、山にのぼるか、と質問されて、山がそこのあるから、と名答した人がいる。


おそらくこの人はどう答えたところで相手に通ずるものではないと知っていたからだろう。

知ル者ハ言ワズ、言ウ者ハ知ラズ、の見事な一例であるか。


昭和63年1月1日「朝日新聞」『ALL WAYS』より

ブック・レビュー


ブック・レビュー


文学を知らない小説家の書いたものを人生を知らない批評家が、馬を鹿だといって論じている。


『ALL WAYS』より

宝石


宝石


惚れあう男女の眼以上の名品はおそらく地上にも地中にも存在するまい。

しかし、いつかはじまった戦争がいつか終わるように、いつかはじまった恋もいつか終わる。

けれど、石の燦光はいつまでもつづく。


『ALL WAYS』より

ネズミ


ネズミ


ピアニストのような指をしている。

その肉は珍味である。

モルモットのフライは南米で、コウモリのスープはポリネシア諸島で、リスのパイはカナダで、また東南アジアでは揚げてよし、焼いてよし、煮てよしの三拍子で、争って食べられる。

蒙古の大草原ではタルバガンの水煮や蒸焼が珍味中の珍味である。

煮れば煮るほどうまくなり、冷めれば冷めるだけうまくなる。


『ALL WAYS』より




神様と母親についてはいつもうまく語れない。(あるインド人の雑貨商の呟き。諺らしく思われる)


『ALL WAYS』より

戦争


戦争


何十万発の弾丸が、いかなる動機から発射されようと、一発として流れ弾丸などというものはないと、哲学者なら考える。


『ALL WAYS』より