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ひとくちに戦争といっ・・・


ひとくちに "戦争" といってもその様態は無数であり、経験は無数であり、記憶もまた無数であって、こまかく痛切なところで話し合っていくと、やがて、どう手のつけようもなく彼我のあいだに茫漠とした薄命の、まさぐりようのない地帯がうかびあがってくることを痛感させられて、沈黙せずにはいられなくなってくる。



『開口閉口』より

ぶどう酒の鑑定は一つ・・・


ぶどう酒の鑑定は一つしかない。

レッテルではなく舌だ。

君がウマイと思えば、酒はそれで成就するのだ。


『開口閉口』
より

江戸の笑いはウィット・・・


江戸の笑いはウィットであり、乾いていて、閉じており、しばしばさびしくもあり、効果としては上半身での微苦笑であることが多かった。


上方の笑いはユーモアであり、感性であって、濡れており、開いていてにぎやかで、浮揚し、全身で笑わせようとたくらむ。しばしばたくらみよりは無手勝流の即興で翔びたとうとする。

どちらが上質であるかはもとより論外。

好みの選択である。

人それぞれの好みである。


『開口閉口』より

私はポルノは社会に影・・・


私はポルノは社会に影響をあたえるものではないと思っている。


それは大人の童話である。


『開口閉口』
より

文学というものは、書・・・


文学というものは、書くほうも、出版するほうも、ギャンブルなのだ。


それも両面待ち、三面待ちという手の使えない、いつも一点張りの、のるか、そるかの張りかたしかできない賭けなのである。


『開口閉口』
より

悪文だけれど妙味のあ・・・


悪文だけれど妙味のある作家の作品は忍耐して読まなければいけない。



『開口閉口』
より

釣師というものは一種・・・


釣師というものは一種の狂気か熱病に似たものを抱いているから地震、津波、戦争などのあるなしにかかわらずでかけていく。



『開口閉口』より

ソフィスティケーショ・・・


"ソフィスティケーション"と呼ばれる心の反射はただ洒脱だけに神経の切尖を磨いておくのではなく、


同時に本然の謙虚さや素朴さもそっとどこかに匂わせて相手を微笑のうちに信頼させる技でもあるらしい。


『開口閉口』より

句読点というものは・・・・


句読点というものは、しばしば、本文とおなじくらいむつかしいものである。



『開口閉口』より

釣りは芸術である。芸・・・


釣りは芸術である。


芸術とは自然にそむきつつ自然に還る困難を実践することである。



『開口閉口』より