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釣師の中にはせっかち・・・


釣師の中にはせっかちで色好みのやつが多いという。


これがなぜかよくわからない。


DVD『河は眠らない』より

釣師は心に傷があるか・・・


釣師は


心に傷があるから

釣りに行く。

しかし、

彼はそれを

知らないでいる。


林房雄「緑の水平線」『オーパ、オーパ!!』より

釣師は魚に自身の投影・・・


釣師は魚に自身の投影を見たがっていて、闘志満々の魚に遭遇すると、糸という電線をつたってその気力がこちらにほとばしりこんでくるように感ずる。

精悍、老獪、気まぐれ、貪婪、賢明、器用、阿呆、魚もさまざまな性格を持っているが、釣師はどの性格も自身の分身と感じているのである。


『もっと遠く!』より

釣りをしているときは・・・


釣りをしているときは外からは静かに見えるけど、実は妄想のまっただ中にある。


このとき考えていることといえば、原稿料のこと、〆切日のこと、編集者のあの顔この顔、それからもっと淫猥、下劣、非道、残忍。


もうホントに地獄の釜みたいに頭の中煮えたぎってる。


それが釣れたとなったら一瞬に消えて、清々しい虚無がたちこめる。



『地球はグラスのふちを回る』
より

人が自身や時代からの・・・


人が自身や時代からのがれるために凝らす工夫はじつに千態万様であって、ひたすらレンズの玉をみがいていた人もあり、鈎のない糸を川に垂れる人もあり、ハンマーで小魚をおびやかす人もある。



『私の釣魚大全』より

『罪と罰』の説くとこ・・・


『罪と罰』の説くところによると犯罪者はかならず現場へもどるそうである。


それとおなじで、釣師はかならず一度釣れた場所へもどる。


『フィッシュ・オン』
より

釣師のなかには山師と・・・


釣師のなかには山師と海師がいるな。


山師のなかには孤独な芸術家が、海師のなかには孤独な権力者が棲んでいる。


『悠々として急げ』より

釣師をさしてホラ吹き・・・


釣師をさしてホラ吹きだというよくある批評はネコをさしてニャオーといって鳴くという程度の指摘にすぎず、精神の貧困もいいところである。


よしんば釣師があきらかにホラと判別できるホラを吹いたところで、やっぱりその批評は貧困である。


『フィッシュ・オン』
より

魚だろうと獣だろうと・・・


魚だろうと獣だろうと人間だろうと、群れにはかならず異分子がまじる。


群れにまじっていようといるまいと、群れからはずれていようといまいと、その位置に関係なく、アウツ(体制外者)がかならず発生するのである。

つまり、個性があるのだ。


『もっと遠く!』より

誰も来ない所、入った・・・


誰も来ない所、入ったことがない、靴跡もない指紋もついてない所へ入って行く。


それで大きな魚を一匹釣り上げると、妙な心理がここで働いて、ワクワクドキドキして針を外すのに手が震えるんですが、

ふっと後ろを振り返って「誰か見ててくれへんかったかなぁ」とこうゆう倒錯心理があるんですけれども。

これがなかなか克服出来ないんですね。


講演『地球を歩く』より

ある時、1968年で・・・


ある時、1968年ですがたまたまやっぱり最前線でしたけれども、魚釣りに行ったの。


戦争しているところへ。

それで皆さんお笑いになる。

私も自分でサイゴン出る時笑ったんで、人が生きるの死ぬの殺し合いしている最中に魚釣りとは何事か、といってほっぺた張りとばされたら、素直に黙って右のほっぺた差し出して、

「もう一つ張っておくんなはれ」

と言おうと思って行ったんですが、現場へ行くとまったく逆で大歓迎。

それで水を持ってきて飲めと言ったり、村長が出てきてバナナくれたりね。

そっちの所じゃダメだからこっち行って釣れとかね。

エラい優しいんです。

一宿一飯の仁義を尽くしてくれるんです。


講演『地球を歩く』より

釣師というものは一種・・・


釣師というものは一種の狂気か熱病に似たものを抱いているから地震、津波、戦争などのあるなしにかかわらずでかけていく。



『開口閉口』より

釣師も、カメラマンも・・・


釣師も、カメラマンも、新聞記者も、学者も、これからは年ごとに仕事がしにくくなることだろうと思う。

野生の帝国に首都はないが十字架もないのである。

われらの友人は、黙殺という、このうえなく痛烈な批判をして、声もなく、しるしものこさずに消えてゆく。


『オーパ!』より