ご訪問ありがとうございます。現在更新休止中です。
ラベル 『白いページ』 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 『白いページ』 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

白いページー開高健エッセイ選集



白いページ―開高健エッセイ選集 (光文社文庫)
「純潔無比の倨傲な大岩壁をしぼって液化したかのようである」新潟・銀山平の水を「飲む」。二〇〇人の部隊のうち十七人しか生き残らなかったヴェトナム戦争の最前線を回想し「弔む」。老釣師から鮎釣りの秘技を「伝授される」―。動詞系をタイトルに、あらゆる事象を多元的な視点で捉え、滾々と湧き溢れる言葉で表現していく。行動する作家が遺した珠玉のエッセイ集。
「白いページ」の名言はこちらから

光文社文庫 開高健エッセイ選集第2弾として、
「眼ある花々 / 開口一番」
も10月8日発売になるようです。

おそらく見ることはそ・・・


おそらく《見る》ことはそのものになることであるが、生涯のうちでもめったにそういうことは発生しない。

眼が人の肉の全てと化すのはおそらく死の瞬間しかない。

見ることはそのものになることであると、生きている人が書くのは、ただ覚悟を述べているのである。


『白いページ』より

物には五味などという・・・


物には "五味" などというコトバではいいつくしようのない、おびただしい味、その輝きと翳りがあるが、もし "気品" ということになれば、それは "ホロにがさ" ではないだろうか。

ことに山菜のホロにがさである。

それには "峻烈" もあり、"幽邃" もこめられているが、これほど舌と精神をひきしめ、洗い、浄化してくれる味はないのではないだろうか。

ひとくちごとに血の濁りが消えていきそうに思えてくる。


『白いページ』より

石器時代から人間とい・・・


石器時代から人間というやつは自明の理が大の苦手ときていて、大火傷を負ったり負わされたりしないことにはそこへたどりつけないときている。



『白いページ』より

いささか観察というこ・・・


いささか観察ということに素養のある人ならば、河馬には何がしかの敬意をおぼえないではいられないはずである。

なぜなら、もしゴリラの顔に漂う一種の高貴さを "剽悍なる憂鬱" と呼ぶとするならば、河馬の顔に目撃されるそれは、"偉大なる怠惰" と呼ばれていいものだからである。

怠惰はそのような相貌を持つことがあると、大いにして精緻なる自然は暗示してくれているのである。


『白いページ』より

これからあとの人生は・・・


これからあとの人生はオマケだ。


1964年2月14日、ベトナム戦争に従軍していた開高健は、ジャングルでベトコンに包囲され一斉攻撃を受ける。
生存者は200名中わずか17名。


『白いページ』より

感情、お金、女、旅・・・・


感情、お金、女、旅、命、言葉、嘘、真実、官能、時間、酒。

何でもいい。

一つでもいい。

三つでもいい。

とめどなくでもいい。

とにかく "浪費" という言葉にふさわしいような生の浪費をすることが小説家にとっては蓄積になるのだという厄介な原理が金持国でも貧乏国でもおかまいなしに襲いかかってくるので私はつらい。


『白いページ』より

酒を飲んでいるとたい・・・


酒を飲んでいるとたいてい昔のことを思いだす。

昔のことを思いださずに酒を飲むというようなことはあり得ないね。

ということはダ、なつかしいか、にがいか、それは人によるとして、つまり弔辞を読んでいるということなんだよ。

みんな酒を飲むときはそれと知らずに弔辞を読んでいるのだよ。


『白いページ』より

小説家は浪費しなけれ・・・


小説家は浪費しなければいけない。


生でも、本でも。


『白いページ』より

あれがあり、これがあ・・・


あれがあり、これがある。


なおあれがあり、なおこれがある。


『白いページ』より

三つの無残な真実から・・・


三つの無残な真実から一つのきれいな嘘を蒸留することは一つの無残な真実から三つの無残な嘘を導きだしてしまうこととおなじほどに失敗しやすいことである



『白いページ』より

鳥獣虫魚や失われた大・・・


鳥獣虫魚や失われた大陸や前世紀の怪物のことなどを書いた本は精神衛生にとてもいい。

新鮮だし、遠大だし、無邪気、純潔であり、想像力を刺激してくれるのである。

いやな毒や膿む傷をうけないだけでなく爽やかで透明な背景を作ってくれるのである。


『白いページ』より

作家にとって文体を変・・・


作家にとって文体を変えるということはシャツを変えるようなことではなく、


むしろ、皮膚を変える、といいたくなるような苦業である。


『白いページ』より

作家の親友は作家では・・・


作家の親友は作家ではなくて、泥棒、詐欺師、刑事、医者、弁護士、娼婦、実業家、水夫、ヒッピー、総会屋、その他何でも、作家以外の職業であるほうが、はるかに栄養豊富になれる。


新鮮さを覚えるし、好奇心がわき、謎を感じる。

それが何よりも貴重なのである。


『白いページ』より

真実の感じられない嘘・・・


真実の感じられない嘘は駄洒落に墜ちるし、


嘘を予感させない真実はじつにしばしば嘘がにじみだしてくる。


『白いページ』より

小説は報道を含んでも・・・


小説は報道を含んでもいいし、しばしば必須栄養物をそこから得るのだが、報道は小説を断じて含んではならない。



『白いページ』より

酒だろうと、香水だろ・・・


酒だろうと、香水だろうと、ハタまた文学であろうと、お粗末品すべてにつきまとうイヤらしさをよくよくおぼえておくのが上物を味得するもっともたしかな、狂いのない方法である。


日頃どれだけお粗末品をたしなんでいるかによってどれだけ上物の全域と真髄が察知できるかがキマる。


『白いページ』より

外交官とは何か。それ・・・


外交官とは何か。


それは一言で定義すれば、祖国のための平然として大嘘をつくことを職業としている正直者である。


『白いページ』より