日本の春は唸らない。
鳴かない。
さえずらない。
跳ねない。
汚れた沈黙があるだけだ。
『フィッシュ・オン』より
『罪と罰』の説くところによると犯罪者はかならず現場へもどるそうである。それとおなじで、釣師はかならず一度釣れた場所へもどる。
『フィッシュ・オン』より
釣師をさしてホラ吹きだというよくある批評はネコをさしてニャオーといって鳴くという程度の指摘にすぎず、精神の貧困もいいところである。よしんば釣師があきらかにホラと判別できるホラを吹いたところで、やっぱりその批評は貧困である。
『フィッシュ・オン』より
いったい人間は魚を釣っているのであるか。
それとも魚に釣られているのであろうか。
遊びを追っていくと、きっと、どこかで、底なしの穴を覗かせられる。
『フィッシュ・オン』より
川のなかの一本の杭と化したが、絶域の水の冷たさに声もだせない。
芸術は忍耐を要求するんだ。
『フィッシュ・オン』より