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例えば言語とか文字と・・・


例えば言語とか文字とかゆうものが出来なかった、出来ていなかった昔、時代があって、その時 「ライオン」という文字は出来ていなかったし、「ライオン」という言葉も出来ていなかったわけですね。


すると「ライオン」とは何かといいますと、強いて解説すると、強力な脚をもち、鋭い爪をもち、ものすごい牙をもっている、混沌とした恐怖のかたまり。

速くて、痛くて、鋭い、恐ろしい混沌のかたまりなんですね。

ライオンじゃなかったわけです。

ところが一度これに「ライオン」という言葉をつくってあてはめてしまいますと、ライオンはどうなるかというと、人間の意識の中でかわってしまう。

やっぱり依然として、鋭くて、速くて、恐ろしい牙をもっているけれども、ただの四つ足の獣にかわってしまうわけですね。

ここで克服できたわけです。

これが文学の始まりなんです。


講演『経験・言葉・虚構』より

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