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ひとくちに戦争といっ・・・
ひとくちに "戦争" といってもその様態は無数であり、経験は無数であり、記憶もまた無数であって、こまかく痛切なところで話し合っていくと、やがて、どう手のつけようもなく彼我のあいだに茫漠とした薄命の、まさぐりようのない地帯がうかびあがってくることを痛感させられて、沈黙せずにはいられなくなってくる。
『開口閉口』より
釣師は魚に自身の投影・・・
釣師は魚に自身の投影を見たがっていて、闘志満々の魚に遭遇すると、糸という電線をつたってその気力がこちらにほとばしりこんでくるように感ずる。
精悍、老獪、気まぐれ、貪婪、賢明、器用、阿呆、魚もさまざまな性格を持っているが、釣師はどの性格も自身の分身と感じているのである。
『もっと遠く!』より
釣りをしているときは・・・
釣りをしているときは外からは静かに見えるけど、実は妄想のまっただ中にある。
このとき考えていることといえば、原稿料のこと、〆切日のこと、編集者のあの顔この顔、それからもっと淫猥、下劣、非道、残忍。
もうホントに地獄の釜みたいに頭の中煮えたぎってる。
それが釣れたとなったら一瞬に消えて、清々しい虚無がたちこめる。
『地球はグラスのふちを回る』より
日本人というのはまだ・・・
日本人というのはまだまだ性短急なるところがあって、論争でけんかになると、一生けんか別れになるような関係が多いね。
論争ではけんかになっても、友情は完全に保持出来るという、おおらかさとゆとりがないんじゃないか。
『悠々として急げ』より
おそらく見ることはそ・・・
おそらく《見る》ことはそのものになることであるが、生涯のうちでもめったにそういうことは発生しない。
眼が人の肉の全てと化すのはおそらく死の瞬間しかない。
見ることはそのものになることであると、生きている人が書くのは、ただ覚悟を述べているのである。
『白いページ』より
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