煙霧の底であえぎつつ・・・
煙霧の底であえぎつつ自分の寝室を切りつめてでも庭をつくろうとする私たちは、それほど自然を尊重しながらも、公共の自然ということになると、手のひらを返したように冷淡であり、粗暴である。たまさかの並木道や公園の汚れかた、傷みかた、衰えかたは何事であろう。そして一歩家のなかにはいったときの、部屋や庭にしみこみ、ふえている清潔さや繊細さや美意識や秩序感覚など、この二つのものの矛盾ぶりは、何事であろう。私たちは自然を溺愛し、自然を侮蔑しているのだ。世界無比を誇ってよい私たちの清潔さや繊細さや美意識や造形感覚や自然愛などは、つまるところ、利己主義の温室のなかでしか息ができないのである。『ずばり東京』より
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